近事呆然☆2022年

2022年11月3日(木)晴 おだやかな秋、文化の日の休日

 2004年刊行の『北村太郎を探して』の兄弟版『北村太郎の探し方』が、ようやくできあがった。いまどき、はた迷惑な、世の中からじゃまにされそうな、560ページもの

厚さになってしまった。

 あれも、これも、できれば収録したいという、例によって、あとさきを考えるちからの足りない頭で進めたら、前作『北村太郎を探して』同様に、こちらは464ページだったが、まあ、この時も、あきれた口調で、「厚いのもいいかな」という言葉を背中越しに聞いたものだったが、このたびも、いきなり「贈呈便」を送りつけられた方たちを、手にするなり、「うわっ!」と、開けかけたくちびるを空気に晒して、そのままがさつかせさせているかもしれない。

 この数日、そんな絵がまぶたに浮かんで、恐縮するばかりだ。

 

 10月26日は、北村太郎さんの30年目の御命日で、11月17日は、お誕生から100年目の日である。30年とも、100年とも、ことに、この世に生まれきて100年というのは、もうすでにここから去っていって30年というのであれば、あらためて意識するのもおかしいが、世の中で行なわれているようなので、区切りの数字を並べてみた。

 

 本の内容は、「Ⅰ北村太郎単行集未収録集成」「Ⅱ北村太郎の探し方ー『北村太郎の会」講演録」「Ⅲそして北村太郎と」「Ⅳ北村太郎の年譜新訂補遺版」で構成されている。細目は、別に「収録一覧」を掲示するので、そちらをご覧いただきたい。

 

 ただ、ひとつだけご紹介させていただければ、「巻頭」に収録した「詩劇「われらの心の駅」」は、北村さんのまとまった作品のうちで、長い間、刊行されておらず、10年前に、『北村太郎の全詩篇』に初めて収録されたが、こちらは「全詩篇の拾遺詩」という位置づけで、本自体も気楽に買い求められない豪華さなので、この機会に、こちらのほうも定価は高めになってしまったが、北村さんの詩の世界に興味をお持ちの方には、まったく手を出せないほどの値段ではない《^?^》ので、『荒地詩集1955年版』発表の、鮎川信夫さんもおもしろいと言っていた作品に関心を寄せていただければありがたい。

 

 もちろん、詩人や、編集者の諸氏が語る「北村太郎の探し方」は、北村さんに対する全人的な接触のしかたなので、いわゆる「詩論・詩人論」という狭隘さからまぬがれていて、ご長女の榎木融理子さんが記す「太郎と文雄」というエッセイに見る《詩人という父親》の在りし日の姿とともに、北村太郎という詩人を探す魅力がいっぱいな本になっているので、ぜひ、お読みいただけると、うれしい。

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2022年9月25日(日)台風一過の快晴

 小林久美子さんの歌集『小さな径の画』が素敵にできあがった。

 2019年の、やはり9月に刊行した、大好評だった『アンヌのいた部屋』と、本の体裁も、短歌の組み方も、著者の希望で、まったく同じスタイルのものになった。

 続篇と言っても、姉妹版と言ってもいいおもむきで、2冊を並べて置いてみると、それぞれの「本」に封じられている「作品世界」が、カバーの、ほんのすこしの紙の色あいが違うことによって、なぜか、「書名」そのものがちからを持って、こちらに向かって呼びかけてくるような感じがする。

 本文へと導く「帯文」もなく、内容は、ページを開いて、読者がまっすぐに感受すること、ただそれだけを祈っているようである。

  

 先の『アンヌのいた部屋』は、ひとりひとりの読者の感受性と、繊細に触れ合うことができ、「愛読書の一冊となった」という声が、多く寄せられた。受賞にはいたらなかったが、新しく設けられた「塚本邦雄賞」の候補として取り上げられ、話題になった。

 このたびの『小さな径の画』も、『アンヌのいた部屋』とまったく変わらない、「静かな思惟に満ちた詩と画の世界」になった。

 懐かしい味わいのする本を開いて、そこにあることばを眼にするだけで、きっと、胸の奥へと染み込んでくるものがあるのを感じることだろう。

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2022年6月3日(金)晴

 今年度、一冊目が、5月末に、ようやく仕上がった。

 『大田美和詩集二〇〇四-二〇二一』である。

 あれこれと手間取って、なんとか刊行できたというところだ。

 

 例によって、「帯文」をここで紹介する。

 

  〈ほんとうの世界〉を言葉にする

   定型詩を求めつづけてきた

   現代歌人が新しい私を自由詩に

   尋ね、〈愛に満ちた生〉を

   あざやかに表現した作品を収める

   第一詩集――。

 

 とリードして、「短章」1篇を掲載している。

 

   樹になろう

 

  生まれ変わったら

  樹になろう

  樹が目覚めるのは

  夜中だけ

  轟轟と音とどろかせ

  団太団太と足踏み鳴らし

  行き暮れた

  旅人だけを驚かす

 

 意欲に溢れた詩集の誕生である。詩の愛好者のみならず、幅広い読者が恵まれるよう

願ってやまない。 

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2022年1月11日(火)雨

 今年は、松の内が明けると、土曜・日曜になり、そして昨日10日の成人の日の祝日となって、コロナウイルスの席捲も続き、また新種株の騒ぎもあり、年々あまりめでたさのなくなった正月に、いっそうのぱっとしない気分の休みだったが、ようやく今日から平常の日々の開始の気持ちだ。

 昨年は、喪にあるような思いのうちにあって、年賀の始まりも始められなかったが、今年はなんとか、元日に賀状を記せたので、ここでご挨拶させていただくことにする。

 2021年にできた本造りの画像を、例年と変わらずに印刷したものだが、日本郵便の賀状作成ツールが一昨年に廃止になったので、なんとか、手元でコピー印刷をし、貼り合わせてやってみた。

 

 また、そんなわけで、昨年は、うまく進まず、年賀挨拶状も、一部にしかできなかったので、コロナの渦中の「2020年」に、ほんの少しした、まあ、仕事量自体は例年と大差なかったが《^?^》、その仕事の画像を工夫してコピー印刷したものが残っているので、記録のために、ここに、保存させていただくことにする。

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